だって、まさか現実の世界でそんなセリフを聞くことなんてないと思っていたからだ。
あまりに非現実的というか……ね?
所詮は女の子が夢見る甘いロマンと欲が詰め込まれた世界の話で、現実世界ではありえないことだとこの歳になってしみじみと感じていたのに。
わたしの手を掴んでいる彼の手が、
わたしを包み込んでいる手が、
泣きたくなるほどあたたかくて鼓動が早鐘を打ち始める。
久しぶりに触れた懐かしい体温にずっと触れていたいと思ってしまうほど。
だけど、その手を離したのはわたしだから。
この手にもう一度、すがってはいけない。
何とか彼が手を離してくれそうな話題を振らなきゃ。
そう思い、
「探してたってどういうこと?」
気になっていたことを素直に口にすると、彼はぱっとわたしの手を離した。
……あ、離してくれた。
これでよかったんだと思うのに離れてしまったことを寂しく思ってしまって胸にヒビが入ったかのようにズキズキと痛むのはきっとまだわたしが君のことを好きだからだろう。



