もう、妹じゃイヤ。

 和兄がくるりとわたしの方を振り向くと、もう一度口を開く。


「紗季のこと、とっくに妹だなんて思ってないし。だからっ……ひとりの女子として見てるっつーか……」


 そう言いながら、和兄が柔らかそうな髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。


「……うん。わかった。リレーで優勝できたら、もう『和兄』って呼ばない。だから、絶対一緒に優勝しようね」


 あたしがそう言った瞬間、和兄が、バチンッ! と自分のほっぺたを思いっきりひっぱたいた。


「うしっ。やる気出た。さっさと戻るぞ」


 そう言うと、あたしの頭をぽんぽんっと軽くなでる和兄。


 ほらっ、すぐそうやって妹扱いするんだから。

 頭を押さえてぷくーっとほっぺたを膨らますあたしを見て、和兄がイシシッと笑っている。


 でもいいや。

 だって、もうすぐこのポジションは終わりにするんだから。

 あたしだって、一生和兄の妹なんてイヤ。

 がんばってがんばって、絶対に優勝して——妹を卒業してやるんだから!



(了)