「——逃亡者発見」

「か、和兄」


 頭の上になにかが乗っけられたような感触がして、体育座りの膝にうずめていた顔をあげると、「ほらっ」と和兄があたしの目の前に、冷たいスポドリのペットボトルを差し出した。

 しんと静まり返った校舎裏。

 運動場の方から、体育祭の練習で盛り上がる声が聞こえてくる。


「ん……ありがと」


 ありがたくそれを受け取ると、わたしはもう一度顔をうつむかせた。


「どした?」


 和兄が、あたしに声をかけながら、隣にどさりと腰をおろす。


 今日は、体育祭のブロック合同練習日。

 さっき、はじめてブロック対抗リレーに出る予定の二、三年生の先輩たちと顔を合わせ、リレーの練習を終えたところ。


「だって……リレーの練習を見てた先輩たちが、あたしのこと、『ヤバい』って。あたし、そんなに足遅いのかなぁ……」


 先輩たちのウワサ話をまた思い出しちゃって、じわっと涙がにじんでくる。