新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

メールにしては、読んでなかった気がする。
あまり詮索するのも悪いので、そのままお茶を飲みながら2個目のおにぎりを頬張った。
目的の温泉にはお昼過ぎには着く予定だったが、チェックインが15時からなので、凍っている滝を観たり、周辺の観光をしてから旅館に向かった。
案内されたお部屋は、閑静な佇まいの旅館の雰囲気と同じく個々に独立しているような形で、窓から見る景色も山々と少し離れた所を流れる川が見えて、自然豊かな場所だった。
「うわぁ……綺麗なお部屋」
はしゃいでいると、仲居さんが窓の隣のガラス張りのドアを開けた。
「こちらが露天風呂になっておりますので、ひと晩中入れますからお好きな時にどうぞ。 もちろん大浴場もございますが、そちらも24時間ご利用になれます」
何だ、何だ。 
見えないので高橋さんの後ろから、背伸びをして横から顔を出して覗いた途端、思わず仰け反ってしまった。
この露天風呂。 
ドアはガラス張りだし、部屋の窓から丸見えだ。
さすがに隣の部屋とは離れているので、覗かれる心配はないけれど……。
「どうぞ、ごゆっくり。 お夕食は、18時からとなっておりますので、またその頃にお伺い致します」
そう言うと、仲居さんは部屋から出て行った。
うわぁ……。
凄く贅沢な雰囲気で綺麗なんだけど、露天風呂がなぁ……。
ハッ!
何か、今……とっても視線を感じる。
恐る恐る、視線だけを動かして高橋さんを見た。
うっ。
やっぱり、こっちを見て悪戯っぽく笑っている。
でも、ちょうど良いタイミングでまた高橋さんのポケットで携帯が振動する音がし始めた。
静かな部屋に、携帯のバイブの振動音が響いている。 
連続して聞こえる振動音。 
それがメールではなく、電話だということが私にも分かった。
「高橋さん。 電話、鳴ってます。 鳴ってますよ」
「ああ……」
すると、高橋さんは怪訝そうな顔をして携帯をポケットから出した。
エッ……。
また……まただ。