新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

「お、おはようございます」
「おはよう! ハハッ……今朝は、モグラちゃんか?」
「モ、モグラって……」
「だって、お前。 髪、酷いぞ」
「えっ?」
慌てて髪の毛に触ると、あちらこちらが撥ねてボサボサになっている感じがした。
必死に寝癖を直していると、高橋さんがコーヒーのいい香りがするマグカップを棚の上に置いた。
そして、ベッドの縁に座って寝ている私のボサボサの髪を手グシで直してくれた。
「すみません……」
「フッ……お前が、昨日暴れるからだろ?」
「なっ……」
高橋さんは、悪戯っぽく笑った。
「起きられるか?」
高橋さんが、枕を背もたれ代わりに置き直してくれて、そこに寄りかかれるように私を起こしてくれた。
ベッドの上に高橋さんと並んで、モーニングコーヒーを飲むなんて、何て幸せな朝なんだろう。
マグカップを両手で持ちながら、マグカップの中のコーヒーを見つめながら微笑んでしまうぐらい、真冬の寒い朝に高橋さんとの至福の時を満喫していた。

「しっかし、よく陽子とハイブリッジの関係がバレないというか……バレてるけど、言わせないというか」
「えっ?」
月末に差し掛かる直前、恒例の帰りがけの30分お茶をしていると、まゆみが言い出した。
「えっ? じゃないわよ。 やっぱり、ハイブリッジの人徳というか。 そういうことなんだろうなぁ。 言わせない威圧感と、存在感。 牢名主軍団ですら静かだし、何も言わなくなったところをみると、嫌われたくないから虎視眈々と陽子の後釜を狙ってるとしか考えられないな」
「後釜?」
すると、まゆみが私の顔の前で人差し指をメトロノームのように、左右に振って見せた。
「だから、その天然ちゃんなところがハイブリッジには堪らなくて、陽子のことが好きなわけよ。 これが、計算マコちゃんでも入ってみな? 絶対、振り向かなかったと思うもん。 故に……牢名主軍団は、端から無理なわけ。 でも、無自覚、後悔無縁、我こそナンバーワンで、オンリーワンな勘違い女なところが、また始末に悪いんだ、これが」