新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

看護師さんが体温計を台の上に置くと同時に、思いっきり私を睨みつけた。
な、何?
私、何かした?
ちゃんと、面会時間に来てるし……。
「また、後できまーす」
看護師さんは、直ぐにまた笑顔になって病室を出て行った。
あの刺すような視線は、何だったのかな?
体温計の計り終わった音が鳴って、高橋さんが無造作に体温計を脇から抜いてベッドテーブルの上に置いたので、すかさずその画面をチェックした。
36.2度。  
平熱だ。 良かった。
「お前、本当に疑い深いのな」
「いじゃい! いだいでずっでば」
高橋さんに両頬を摘まれて、酷い言い方になってしまった。
痛さを堪えつつ、また何をされるかわからないので慌ててベッドから飛び降りた。
ベッドの脇に立って高橋さんと話をしていると、暫くして先ほどの看護師さんが戻ってきて、体温計をチェックして高橋さんの脈を計りだした。
何か……その脈の計り方が、気に入らない。
何で、そんなに体を密着させるのよ。
見ていて、凄く苛々する。
脈を計っている時間が、やけに長く感じられる。
ようやく終わって、問診のようなことをしてやっと部屋を出て行った。
薬等も飲まないところを見ると、やっぱり検査入院だったんだということに、やっと納得出来た。
それにしても、あの看護師さんが気に入らない。
そんな私の頬を、高橋さんがまた人差し指で押した。
思わず、その感触で我に返った。
「なぁーに、膨れてるんだ?」
「えっ? 膨れてなんか、いないです」
別に、高橋さんが悪いわけじゃないのに、つい強い口調になってしまった。
すると、高橋さんがベッドから降りてベッドの下に置いてあったサンダルを履くと、椅子に掛けてあったセーターを羽織った。
トイレは部屋にあるし……何処か、行くのかな?