新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

「もう、遅いから寝よう」
エッ……。
左手にのっていたオルゴールをテーブルの上に置いて、高橋さんは私の腰に右手を添えると、そのまま寝室に向かった。
何故? 
どうして、何も聞かないの?
高橋さんは、きっと気づいているはず。
このオルゴールに、何かあることを……。
疑問を抱いたまま、ベッドの縁におざなりに座った。
「電気、消すぞ」
その声で我に返り、慌ててベッドに横になると、高橋さんは電気を消してそのままベッドに横になって布団を掛けてくれた。
横になっていても、胸のつかえが取れない。
高橋さんが、気づいている気がしてならない。
でも……。
「高橋さん」
堪らず、暗闇の中で高橋さんの名前を呼んだ。
「ん?」
高橋さんが、こちらを向いてくれたのが気配で分かる。
「あの……」
「言いたくないことは、無理に言わなくていい。 触れて欲しくないことに、俺は触れない主義だから」
やはり高橋さんは、気づいていた。
あのオルゴールに、何かがあることを……。
「仁が……」
そこまで言い掛けた高橋さんが、一瞬言葉を選んだ気配がした。
仁さんが、どうしたの?
「俺に気にせず、遠慮なく捨ててくれていいからって言ってたぞ」
そんな……。
まさか、仁さんまで気づいていたなんて。
よほど、顔に出てしまっていたんだろうか。 
せっかく選んでくれたプレゼントだったのに、仁さんに凄く悪いことをしてしまった。 嫌な思いをさせてしまったに、違いない。
ああ……。
せっかく参加させてもらった、クリスマスパーティーだったのに。
「どうした? お前、震えてる。 寒いのか?」
高橋さんが、そっと抱きしめてくれた。
さっきシャワーを浴びたばかりで、寒いわけないこともわかっているのに。 高橋さんは敢えてそう言ってくれているのが、私にも分かった。
私の頭におでこを軽く当てた、そんな高橋さんの優しさに触れて涙が溢れ出していた。
「泣いて気が済むなら、泣けばいい」
泣いてることも、お見通しなの?
穏やかな声と、頭を撫でてくれている手の温もりが余計に涙腺を緩ませる。