新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

楽しい時間は、あっという間に経ってしまう。
流石にお腹もいっぱいになって、飲んでいたお酒も飽きてしまったらしく、みんなでお茶を飲みながら他愛のない話をしている。
気がつくと、すでに午前0時近くなっていて、明良さんの面白い話に聞き入っていたせいか、仁さんがいつの間に入ったのか、シャワーを浴びて出て来た。
「明良。 そろそろ、帰るぞ」
「えっ! もう、そんな時間?」
明良さんが、驚いて時計を見て仰け反っていた。
エッ……。
2人とも、泊まっていかないの?
「泊まっていかないのか?」
高橋さんも、仁さんに聞いている。
「ああ。 明日、用事があるしな」
仁さんは、帰り支度をしながらバッグにウォーターボールをしまってくれていた。
持って帰ってくれて、嬉しいな。
「俺も、ひとつ屋根の下で鼻血出したくないから帰るわ」
「イッテ-!」
「お前は明日、当直だろが」
間髪入れずに、また明良さんは後頭部を仁さんに叩かれていた。
明良さんも帰り支度を終えて、仁さんと玄関に向かった。
「それじゃ、陽子ちゃぁん。 程々にねぇ」
「えっ?」
今度は、正面から高橋さんに明良さんは叩かれている。
「何、すんだよ! 暴力エロ会計士」
「イテッ! イテテッ……」
アハハ……。
明良さん、大変だ。
逃げ場のない玄関先で、高橋さんと仁さんに前後から叩かれてしまった。
「お前等、絶対結託してるだろ」
明良さんが、痛そうに頭を押さえながら靴を履いている。
「貴博。 またな」
「ああ」
「陽子ちゃん。 またね」
「はい。 仁さん。 プレゼント、ありがとうございました」
仁さんが、にっこり笑ってくれた。
ああ。
新たな発見だった。
仁さんって、笑うともっと格好いいんだ。
「陽子ちゃぁん。 まったねぇ」
「はい。 明良さん。 お料理、とっても美味しかったです。 ご馳走様でした」
「また、いつでも呼んで。 作るからぁ」