新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

あれ?
何だか、いい匂いがする。
そんな、鼻を利かせての目覚めだった。
嘘。
本当に、寝ちゃったんだ。
起き上がると、すっかりもう陽が傾いて夕方になっていた。
昨日、バッグを高橋さんの部屋に持って来ておいて良かったと思いながら、顔の修復工事をして急いでリビングに行くと、3人とももう起きていて明良さんも復活していた。
どうして?
何で、高橋さん。
みんな起きているのに、起こしてくれなかったの?
何だか、損した気分だ。
「陽子ちゃん。 おっはよー!」
うわっ。
元気になった明良さんがすっ飛んで来て、思いっきり後ろからhugされてしまった。
高橋さん以外の男性に抱きしめられるのは、やはり何となく気が引けてしまう。
気になって、チラッと高橋さんを見ると、煙草を吸いながらビールを飲んでいた。
あれ?
気づかなかったのかな?
それとも、気づかないふりをしている?
この位置からではその表情は伺いしれないが、恐らくいつものポーカーフェイスだろうから、いずれにしてもまったく読み取れないことは分かっていた。
「明良。 もう、いい加減にしろ! また、貴博に撃沈させられるぞ」
「ゲッ。 それだけは、勘弁」
仁さんに言われた途端、直ぐさま明良さんが離れてくれた。
フフッ。
でも、何だか可笑しい。
明良さんは、よっぽど高橋さんが恐いのかな?
それとも、後々のことを考えると、お酒を飲まされるのが嫌なのかもしれない。
そんなことを想像して高橋さんを見ると、目笑しながらビールを飲んでいた
やっぱり、気づいていたんだ。
でも、さっきは何で気づかないふりをしたんだろう?
「さあ、出来た」
明良さんの声がキッチンから聞こえてきて、見ると美味しそうな匂いの元をテーブルに持って来た。
まだお腹がいっぱいだったが、醤油の焼けた香ばしい匂いに誘われるように、明良さんに近寄った。
「旨そうジャン」
「うわぁ。 美味しそうですねぇ」
明良さんを見ると、自慢げに腕を組んで胸を張っている。