少し渋滞していたので、高橋さんのマンションまで帰るのに時間が掛かってしまった。
すると、見慣れた車がマンションの車路に停まっていて、ちょうど車が横に並びかけた時、高橋さんが車を停めて助手席の窓を開けた。
隣の車の車内を見ると、仁さんの運転で助手席に明良さんが座っていた。
「おっせーよ!」
明良さんが、助手席から身を乗り出して叫んだ。
「はえーよ! 仁。 まだ、1時間もあるじゃん」
「ああ。 隣のやる気満々男が、朝っぱらから起こしやがって、そのまま付き合わされて……」
そこまで言い掛けて、仁さんがハンドルを抱え込むようにしてガックリと頭をもたげた。
何だか、明良さんが可愛く思えて微笑ましかった。
「相変わらず、 明良はお子ちゃまだな。 来客用に車停めて来いよ。フロントに予約してあるから」
「お-!」
挨拶する暇もなく会話は終わってしまい、助手席の窓を閉めながら高橋さんが車を発進させた。
車庫に車を入れて、エントランスのロビーで明良さんと仁さんが来るのを待っていると、話し声が聞こえて明良さんと仁さんが登場した。
「貴博。 ちょっと、こっち持って」
「ああ。 また、随分買い込んだな」
「そりゃ、そうだろ。 馬1頭飼ってるようだって、お前のお袋さんが昔からよく言ってたからな。 暇さえあれば、冷蔵庫の扉を開けてる馬が居るって。 その馬1頭含む食材を調達してきたからな」
「お前も、同じようなもんだろ」
明良さんと仁さんは、両手いっぱいに食材であろう荷物を持っていた。
「あの、私も何か……」
「大丈夫だ。 それより、エレベーターのボタンを押してくれ」
「あっ、はい」
凄い荷物の量だったから、何か持とうと思って言い掛けたが、高橋さんにそう言われてしまったので、慌ててエレベーターのボタンを押した。
エレベーターに乗ると、直ぐに仁さんと目が合った。