頭では分かっていても、面と向かって他人からあんな風に言われると、心が揺らいで不安になってしまう。
でも、高橋さんがはっきりそう言ってくれたのなら、その言葉を信じたい。
直ぐには切り替えられなくても、なるべく気にしないようにしよう。 そう出来る自信も、少し出て来た気がする。
そんな風に思えて、何度も頷いた。
「それに……」
エッ……。
「お前が俺を選んだのは、お前自身が決めたことなんじゃないのか? どうなんだ?」
「そ、それは……」
うっ!
ど、どうしよう。 
それこそ、そんな面と向かって急に聞かれても、恥ずかしくて答えられない。
「だろ?」
「えっ?」
頭の中がパニックを起こしていたので、聞き逃したのかと思って焦って顔を上げた。
すると、高橋さんが横目で少しムッとしたような表情を見せてから、はにかんだように微笑んだ
「言ってる俺だって、かぁなぁりぃ恥ずかしいわけ。 わ・か・る?」
そう言うと、高橋さんが人差し指で私の額をつついた。
高橋さんでも、恥ずかしいんだ。
つい、黙ったまま高橋さんを見上げて、ニヤニヤしてしまった。
「何、ニヤニヤしてるんだよ。 ほら、分かったなら、もう行くぞ」
「はい」
高橋さんが私の手を引いて、駐車場へと向かった。
これからも、こうやって何かに躓いたり悩んだりしたら、高橋さんに諭されていくのかな。
でも、そうやって少しでも成長出来たらいいな。
きっと、高橋さんは正しい道に私を導いてくれるはずだから。
そう思えた私は、一気に逡巡が霧散した感じで心の武装が少しだけ解けて軽くなった気がした。