新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

何で、 何処にあるか分かったの?
ああ……。
前に転んで膝を打った時に、 救急箱のある場所を高橋さんに教えて事があった。
あの時、 突然別れを告げられたんだった。 哀しい想い出。
「陽子ちゃん。 大丈夫?」
明良さんが枕元に来て、 私の顔を覗き込んでいる。
「ちょっと診せてね」
「はい……」
明良さんが、 聴診器を鎖骨の下あたりまで差し込んだ。
ひんやりとする聴診器の感触と、 明良さんの手。 手首を持たれて、 脈を計っている時もその冷たさが気持ち良く感じられる。
だが、 その気持ち良さも直ぐに終わってしまい、 明良さんが立ち上がった。
「貴博。 今から大学連れて行こう」
エッ……。
明良さんの顔を見上げると、 その隣に腕を組んで私を心配そうに見つめる高橋さんの姿があった。
これ以上、 高橋さんにも明良さんにも心配を掛けてはいけない。 何より、 決算でどんなにか忙しい高橋さんと中原さんに迷惑をかけたく無い。
「明良さん。 私……ゴホッ、 ゴホッゴホッ……ゴホッ」
「大丈夫。 心配いらないよ。 念のためだから」
高橋さんは、 黙ったまま私を見つめていた。
苦しさと不安から黙って明良さんを見つめていると、 高橋さんがそっと私の体を起こしてくれたので、 もう病院に行く事は免れないと察して保険証だけを用意してバッグに入れた。
すると、 直ぐにそのバッグを明良さんが持ってくれて、 高橋さんに抱っこされて車に乗せられるとそのまま明良さんの病院へと向かった。
薄々、 何となく察してはいたが、 その夜、 家に帰る事は出来なかった。
風邪を拗らせたのか? 肺炎を起こして、 入院することになってしまったのだった。
病院に着くと直ぐに血液検査をされて、 その後レントゲン、 CT等々、 続けざまにあらゆる検査をされた。 静かに寝ていたい心境だったが、 そうはいかず……。
それでも、 ずっと傍に高橋さんが居てくれたお陰で、 安堵していられた。 それと同時に、 『 明良に感謝だな。 知り合いじゃなければ、 ここまで時間外に短時間で検査は受けられない。 ドクター武田にお礼を言っとけ。 勿論、 良くなってからだぞ  』 と、 優しく微笑みながら高橋さんに言われた。
ひと通りの検査が終わって病室のベッドに寝かされると、 白衣に着替えた明良さんが病室に入ってきた。