新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

いきなり高橋さんが私の両肩を持ち、 真上からこちらを見た。
「俺は、 そこまで他人の心を弄んだり出来ないぞ。 あれは……あの時出て行ってくれと言ったのは、 ミサにだ」
「えっ? でもあの時、 高橋さんは私の顔を見て……」
確かに私の顔を見て、 『 出て行ってくれないか 』 と言った。
それは、 違ったの?
「あれは、 お前の事を心配していたところに急にミサが登場したから。 だから、 お前を見ながらそう言っただけだ」
そんな……。
「本当ですか?」
「本当だ。 嘘を言ってどうなる。 さっきも言っただろ? 正直に応えてるぞ。 俺は」
あれは、 私の勘違いだったんだ。 そうだったんだ。
安堵した気持ちに少し余裕が生まれて、 まゆみがこの前言っていた子供の状態はどうなのかが気になった。
「あの……ミサさんのお子さんは、 その後どうなんですか?」
あまり聞きたくない複雑な思いだけど、 それでもやっぱり私も気になる。
「俺は直接もう関わらない事になっているから分からないが、 明良の話だと今のところ安定しているらしい」
「そうなんですか。 良かったですね」
何だか滑稽な会話に思えてしまう。
高橋さんとミサさんとの間に出来た子供の心配を、 何故か私がしている。
「最初の1週間。 半月、 1ヶ月、 3ヶ月、 半年、 1年」
「えっ?」
高橋さんは、 まるで自分に言い聞かせるように呟いていた。