新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

暗闇の中で顔もそんなにはっきりとは分からないし、 高橋さんと目を合わせると萎縮して聞けなくなってしまいそうだったので、 今のこの状況は私にとってベストなものなのかもしれない。 そう言い聞かせて、 思い切って高橋さんに声を掛けた。
「高橋さん……」
「ん?」
やっぱり高橋さんもまだ寝ていなかったようで、 直ぐに返事をしてくれた。
「あの……」
「眠れないのか?」
その声があまりにも優しかったので、 思わず左側にいる高橋さんの方を見てしまった。
すると高橋さんは向こう側を向いていたので、 表情は窺い知る事は出来なかったが、 怒っている様子もなくいつもと変わらなかった。
この方が聞きやすいかもしれない。
「私……どうしても教えて頂きたい事があるんです」
言えた。 
でも、 この後がもっと大変なんだけど。
それでも、 取り敢えずは口に出して言えた。
「何だ?」
ひぃ!
高橋さん。 
こちらを向いちゃった。 
み、見ないで欲しかった。
焦って、 思わず身体を引いてしまう。
「どうした?」
もう既に暗闇に目も慣れていたので、 高橋さんの表情も視線も直ぐ隣にいるのでよく見えていた。
でも、 聞かなくては。 
このままじゃ、 いけないもの。
「あれから私……ずっと毎日考えていて……」
横になっているのに、 頭が何だかクラクラしている。 それでも高橋さんは、 そんな私を急かすわけでもなく黙って次の言葉を待っていてくれる。
「あの日から……ずっと私、 分からなくて。 どうしても高橋さんに、 お聞きしたい事があるんです」
「何をだ?」
寝ながらだったが私を捉えて離さない高橋さんのその視線は、 とても鋭くて背筋がゾクッとしてしまう。
ああ……。