新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

「聞いてるのか?」
「あっ。 す、 すみません」
そんな自問自答している間に、 何か聞かれていたらしい。
部屋の真ん中に鎮座しているダブルベッドが嫌でも視界に入ってしまい、 まともに高橋さんの顔が見られない。
落ち着かないまま右往左往している私をジッと見つめていた高橋さんが、 何かを言おうとしているのが分かってギュッと無意識に両サイドで握り拳を作っていた。
「食事に行こう」
「えっ? は、 はい」
高橋さんは、 まるで何も感じてないかのようにいつもと変わらない口調でそう言うと、 荷物をクローゼットの中に入れてくれた。
私が意識し過ぎなのかな。
そして、 雪降る街にわざわざ出るのも面倒だという事で、 ホテルの中でゆっくり食事をして部屋へと戻ったが、 部屋に戻るとその光景を目の当たりにして、 また現実に引き戻されてしまう。
昨日や一昨日は隣同士の部屋で、 虚しくとても寂しい気持ちでいっぱいだった。
でも、 今日は同じ部屋。 しかもダブルベッド……。
昨日とは矛盾しているが、 部屋に戻るのが凄く躊躇われた。
部屋に戻って高橋さんがシャワーを浴びている間も、 どうにも落ち着かない。 1人で意識し過ぎなのよ。 単純に私がソファーで寝ればいいだけの事なんだから。 何をそんなに焦っているんだろう。 もっと落ち着かなきゃ。
ドアの開く音がして、 シャワーを浴びた高橋さんが出てきた。
ひぃ。
一気に落ち着くどころか、 焦って右往左往してしまった。
「ふぅ。 何やってんだ? お前もシャワー浴びてきたら?」
エッ……。
「あっ……は、 はい」
何でだろう?