新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

高橋さんはタクシーの運転手さんにそう告げると、 そのままシートの背もたれに寄り掛かった。
「ホテルって、 高橋さん?」
「もう多分、 今日は飛行機は飛ばないだろう。 万が一、 飛んだとしても夜中とかそんな感じだからあり得ないだろうし……空港に泊まるのはお前が疲れるから。 だとすると、 とにかく泊まるところを確保しておかないと。 ただ、 土曜だからなぁ……」
そうだったんだ。
さっき曜日が悪いって言っていたのは、 そういう事だったんだ。
それからタクシーの運転手さんが連れて行ってくれた、 空港から近いいちばん大きなホテルへと向かい、 フロントで宿泊出来るかどうかを聞いた。
心配だったので、 高橋さんの隣でそっと様子を窺っている。
「シングル2つなんですけれど、 今晩泊まりたいのですが空いてますか?」
「少しお待ち下さいませ」
フロントの男の人は宿泊データを、 パソコンで調べてくれている。
「申し訳ございません。 生憎、 全室満室となっております」
どうしよう。
どうするの? 高橋さん。
すると高橋さんは、チラッと私の方を見てまたフロントの男性に話し掛けた。
「ツインもないですか?」
エッ……。
「少しお待ち下さい」
ツインって、 高橋さん。 同じ部屋って事でしょう?
一気に心臓の鼓動が早くなったのが、自分でもわかった。
パソコンに何度か打ち込んでは打ち直しているフロントの男性の人の顔を、 食い入るように見てしまう。
「申し訳ございません。 お客様、 ツインのお部屋も満席でございまして、 今ご用意出来ますお部屋はダブルのお部屋が1つだけございますが……」
ダブルって、 まさか……。
すると、 高橋さんは一瞬目を瞑ったが、 直ぐまたフロントの男性を見た。
「それじゃ、 そこでお願いします」
嘘でしょう?
「かしこまりました。 それではこちらに、 ご住所とお名前のご記入をお願い致します」
フロントの男性の人の声が、 まるで警告音のように耳に響いている。
ダブルって……。