新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

家を出るまで冷たいタオルで目を冷やしていたが、効果無し。 仕方なく、少し濃いめのメイクにして会社へと向かう。
本当は休みたい気分200%なんだけれど、中原さんが1人になってしまうのでそうもいかない。 会社に行っても高橋さんは席に居ないと思うと、気分も沈む。 いくら面と向かってあんな風に言われても、やはり嫌いになれない。 まだ、好きだから。 
今朝は良いお天気なのに、周りの景色はあれから色を成さないまま。 つり革に掴まっていると、ポケットで携帯が震えた。
誰だろう?
多分、メールだ。
でも車内が混んでいて見られないので、電車を降りてから確認しようと思ってそのまま放置していた。
最寄り駅に着いて改札を出てから携帯を開くと、1通のメールが届いていた。
差出人 【 星川 仁 】
慌ててメールを開くと、 『 電話下さい 』 と書いてあったので、急いで電話を掛けた。
「もしもし……」
あっ。 出てくれた。
「お、おはようございます。 矢島ですけど……」
「おはよう。 ごめんね。 忙しいのに、電話貰っちゃって……時間もないと思うから、用件だけ。 今日、帰りにちょっと会えないかな? 会社、何時頃に出られそう?」
「えっ? 今日ですか? 多分……17時半ぐらいには何もなければ上がれますけど……」
仁さん。 
いきなり、どうしたんだろう?
「じゃあ、俺は休みだから。 その頃、会社に迎えに行くから待ってて」
「えっ?」
「うーんと……目の前の交差点を渡ったところに居る。 車は、分かるよね?」
「あっ……はい」
「それじゃ。 その時に、また」
エッ……。
半ば一方的に、電話を切られてしまった。