恐くて、声に出して聞けない。
右頬をつたう涙を拭うことも出来ない。
今動いたら、問い掛けたら、全てが終わってしまいそうで何も出来なかった。
目の前に高橋さんが居る。 こんなに近くで見つめ合っているのに、高橋さんが遠くに感じる。
高橋さんは、今どんな思いで私を見ているの?
その瞳に、私はどんな風に映っているの?
瞬きをすると、頬を伝う涙を追うようにまた右目から涙が溢れる。
嘘……。
だが、その涙で曇った右目にスローモーションのようにゆっくりと右頬に触れようとしていた高橋さんの左手が微かに見えた。
ああ……またその綺麗な指で、涙を拭ってもらえるの?
そう思ったら、自然に目を閉じていた。
トントン。
でもそれは、ドアをノックする音に遮られ叶わなかった。
「はい」
高橋さんの声とノックと同時にスライドドアが開く音に反応して振り返ると、大きな花束を抱えた背の高い女性が立っていた。
バサバサと50本はあるだろう花束を包んであるセロファンの音を部屋の中に響き渡らせると、その女性が花束の後ろから顔を覗かせた。
「貴博。 赤いバラが好きでしょう? あら? 面会の方、いらしてたの?」
この声……この声は……。
咄嗟に高橋さんを見ると、高橋さんも私をジッと見ていた。
「出て行ってくれないか」
うっ。
はっきり目を見て、言われてしまった。
それは、私に言っているの?
そうだよね? きっと、そうなんだ。
高橋さんが私の目を見ながら言ったということは、私に出て行って欲しいと言ってるんだ。
「ご、ごめんなさい。 直ぐ出ます。 お邪魔して、申し訳ありませんでした。 どうぞ、お、お大事に」
ああ……そういうことだったんだ。
そうだったんだ。 全てが繋がった。
あの日。 高橋さんの誕生日にミサさんが高橋さんのマンションに来たのも、偶然じゃなかった。 そして、一方的に別れを告げられた後、私には黙って入院しているのにミサさんはそれを知っていた。
右頬をつたう涙を拭うことも出来ない。
今動いたら、問い掛けたら、全てが終わってしまいそうで何も出来なかった。
目の前に高橋さんが居る。 こんなに近くで見つめ合っているのに、高橋さんが遠くに感じる。
高橋さんは、今どんな思いで私を見ているの?
その瞳に、私はどんな風に映っているの?
瞬きをすると、頬を伝う涙を追うようにまた右目から涙が溢れる。
嘘……。
だが、その涙で曇った右目にスローモーションのようにゆっくりと右頬に触れようとしていた高橋さんの左手が微かに見えた。
ああ……またその綺麗な指で、涙を拭ってもらえるの?
そう思ったら、自然に目を閉じていた。
トントン。
でもそれは、ドアをノックする音に遮られ叶わなかった。
「はい」
高橋さんの声とノックと同時にスライドドアが開く音に反応して振り返ると、大きな花束を抱えた背の高い女性が立っていた。
バサバサと50本はあるだろう花束を包んであるセロファンの音を部屋の中に響き渡らせると、その女性が花束の後ろから顔を覗かせた。
「貴博。 赤いバラが好きでしょう? あら? 面会の方、いらしてたの?」
この声……この声は……。
咄嗟に高橋さんを見ると、高橋さんも私をジッと見ていた。
「出て行ってくれないか」
うっ。
はっきり目を見て、言われてしまった。
それは、私に言っているの?
そうだよね? きっと、そうなんだ。
高橋さんが私の目を見ながら言ったということは、私に出て行って欲しいと言ってるんだ。
「ご、ごめんなさい。 直ぐ出ます。 お邪魔して、申し訳ありませんでした。 どうぞ、お、お大事に」
ああ……そういうことだったんだ。
そうだったんだ。 全てが繋がった。
あの日。 高橋さんの誕生日にミサさんが高橋さんのマンションに来たのも、偶然じゃなかった。 そして、一方的に別れを告げられた後、私には黙って入院しているのにミサさんはそれを知っていた。


