新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

そんな中原さんの好意に甘えて、少し早めの15時に会社を出て病院に向かうためにホームで電車を待っている。
本当は16時頃に出ようとしていたが、中原さんがもう早く行っていいからと何度も言ってくれて、お言葉に甘えてそうさせてもらったのだった。
行きがけに、お花屋さんでお花を買って行くことにしていたので、まずはお花屋さんに入って切り花を選んだ。
本当は、自分が赤いバラが好きなので赤にしたかったけれど、何となく優しい感じのピンクのバラにした。 5本をラッピングしてもらって電車に乗り、病院の最寄り駅に着いた。
書いてあったメモ紙を、もう1度見る。
病棟名が書いてあるけれど、そこは明良さんの居る外科だった。
この前と違うんだ。 この前は、確か内科だったはず。 何故、外科に入院しているんだろうという素朴な疑問と、外科は手術をしたりするところでもあるので高橋さんの病気が手術をするほど悪いのかと思ったり……何より、もしかしたら明良さんから何か教えてもらえるんじゃないかという僅かな希望を持ちながら、病院の面会受付でバッチを貰って病棟まではやる気持ちを抑えながら足早にエレベーターに乗った。
外科は3階と面会受付で聞いたが、果たして何号室なのかが分からない。 ナースステーションで聞いて下さいとのことだったので、キョロキョロしながらナースステーションを探していると、いきなり誰かにコートの袖を掴まれて引っ張られた。
「キャッ……」
「シッ!」
「あ、明良さん」
「ちょっと、こっち来て」
そのまま明良さんに連れられ、すぐ傍のカンファレンスルームの部屋に入った。
「明良さん。 いったい、どうしたんですか?」
「どうしたって言われても、ねぇ。 此処、俺の病棟だよ? それに……貴博に会いに来たんでしょ?」
会いに来た?
確かに会いに来たというのは合っているのだけれど、明良さんはまだ知らないんだね。 きっと……高橋さんに別れを告げられたこと。