高橋さんは、そのまま両手を下ろすとゆっくり上体を後ろに逸らし、天を仰いだ。
今しかない。
高橋さんを留めなきゃ!
動けなくなっていた体から持っているすべての力を出し、高橋さんの所まで全速力で階段を駆け下りた。
マンションの玄関から飛び出すと、でもそこにはもう高橋さんの車はなく、慌てて歩道から見ると赤いテールランプの灯りがぼんやり虚しく徐々に遠くなっていくのが見えた。
それは、まるで高橋さんの心が私から離れていくよう。
嫌だ。 こんなの絶対に……嫌。
車を走って追い掛けるなんて無理だと分かっていても、無我夢中で走り出していた。
きっと突き当たりの信号で、停まるかもしれない。
僅かな望みに賭けて、歩道から車道に出て必死に走った。 車道の方が、高橋さんに気づいてもらえる可能性が高いと思ったから。
何で、サンダルなんて履いてきたんだろう。 自分の詰めの甘さが悔やまれる。 だが、その僅かな期待が功を奏して、高橋さんの車は信号待ちで停まっていた。
だんだん高橋さんの車が、はっきりと見えてきた。
あと、5メートル……高橋さん。 お願い。 気づいて!
うわっ。
あと少しというところで、サンダルが脱げて信号の手前で転んでしまった。
「痛っ……」
その時、信号が青になって高橋さんの車は曲がって行ってしまった。
寒々とした青信号の灯りが、車路を照らす。 高橋さんの車が走り去った前方を見たまま、落胆と膝を強打した痛さで車道の真ん中に蹲ったまま動けなかった。
その時、パッパッパーッ! と、突然大きなクラクションの音と共に1台の車が後ろから走ってくるのが見えた。
大変。
慌てて歩道に避けようとしたが、膝が痛くてなかなか立ち上がれない。 申しわけないけど、運転手さん。 お願いだから、私を避けて通って行って欲しい。 必死に立ち上がろうと試みたが、やはり無理だった。
車のヘッドライトが煌々と眩しさを増してきて、車が迫ってきていることが分かる。 クラクションの音も、大音量で更に間近に聞こえてきた。
「ごめんなさい……」
そう呟いて、そのまま車が来る方に尻餅を突いたままライトの眩しさを左手で目を被いながら右手で膝を押さえたまま蹲った。
今しかない。
高橋さんを留めなきゃ!
動けなくなっていた体から持っているすべての力を出し、高橋さんの所まで全速力で階段を駆け下りた。
マンションの玄関から飛び出すと、でもそこにはもう高橋さんの車はなく、慌てて歩道から見ると赤いテールランプの灯りがぼんやり虚しく徐々に遠くなっていくのが見えた。
それは、まるで高橋さんの心が私から離れていくよう。
嫌だ。 こんなの絶対に……嫌。
車を走って追い掛けるなんて無理だと分かっていても、無我夢中で走り出していた。
きっと突き当たりの信号で、停まるかもしれない。
僅かな望みに賭けて、歩道から車道に出て必死に走った。 車道の方が、高橋さんに気づいてもらえる可能性が高いと思ったから。
何で、サンダルなんて履いてきたんだろう。 自分の詰めの甘さが悔やまれる。 だが、その僅かな期待が功を奏して、高橋さんの車は信号待ちで停まっていた。
だんだん高橋さんの車が、はっきりと見えてきた。
あと、5メートル……高橋さん。 お願い。 気づいて!
うわっ。
あと少しというところで、サンダルが脱げて信号の手前で転んでしまった。
「痛っ……」
その時、信号が青になって高橋さんの車は曲がって行ってしまった。
寒々とした青信号の灯りが、車路を照らす。 高橋さんの車が走り去った前方を見たまま、落胆と膝を強打した痛さで車道の真ん中に蹲ったまま動けなかった。
その時、パッパッパーッ! と、突然大きなクラクションの音と共に1台の車が後ろから走ってくるのが見えた。
大変。
慌てて歩道に避けようとしたが、膝が痛くてなかなか立ち上がれない。 申しわけないけど、運転手さん。 お願いだから、私を避けて通って行って欲しい。 必死に立ち上がろうと試みたが、やはり無理だった。
車のヘッドライトが煌々と眩しさを増してきて、車が迫ってきていることが分かる。 クラクションの音も、大音量で更に間近に聞こえてきた。
「ごめんなさい……」
そう呟いて、そのまま車が来る方に尻餅を突いたままライトの眩しさを左手で目を被いながら右手で膝を押さえたまま蹲った。


