高橋さんは仕事中と同じ淡々とした口調で、それでいて隙を見せないその言い方。 私にすら、その隙を見せなくなってしまうの?
「あの、私がこの前、社内で私的なことを聞いてしまったからですか?」
エレベーターの中で、我慢出来ずに病院の検査結果を聞いてしまった。 そのことが、心の何処かで引っ掛かっていたのも事実。 でも、謝る機会を逸してしまっていた。
「仕事で気を遣っている分、他のことに社内で気を遣うのは煩わしいだけだ」
私の後ろのカーテンの上部だろうか? その近辺を見つめながら、高橋さんが言った。
そう。
まるでそれは、私と視線を合わすまいとして見ているようだった。
そして、そのまま背を向けて玄関へと歩き出す姿が、スローモーションのように視界に入ってきた。
「待って下さい」
立ち上がって、高橋さんの背中に向かって声をかけると、無言で高橋さんが玄関で靴を履きながらこちらを見た。
「そのことで……そのことで、そのことだけで私と別れるんですか? 一緒に時を刻んでいこうって言ったのは……高橋さん。 あれは……嘘だったんですか?」
女々しいようだが、引き留めずにはいられない。 まったくわけが分からないまま、このまま終わりにするなんて……。
「そう解釈してもらっても、構わない」
しかし、そんな感情を剥き出しの私に対しても高橋さんは冷静だった。
冷静というより、寧ろ冷酷で吐き捨てると言った物言いに聞こえる。
「高橋さん……私に何か隠していませんか? 言ってくれなきゃ分からないって、何時も高橋さんが言っているじゃないですか」
「フッ……」
エッ……。
すると、高橋さんが何故か微笑んだ。
「何も隠してはいない。 それに……やりたい時にやれない女は、要らない」
そんな……。
高橋さんが、後ろのベッドの方を見た。
ああ。
きっと、さっきのことを言っているんだ。
「遅くに悪かったな」
嘘でしょう?
本当に、行ってしまうの?
もう私の隣には、高橋さんは居てくれないの?
その腕の中で、抱きしめてもらえないの?
「高橋さん」
馬鹿のひとつ覚えのように、高橋さんの名前しか呼べない。
高橋さんの背中に向かって、もう1度呼びかけた。
「それと……」
「あの、私がこの前、社内で私的なことを聞いてしまったからですか?」
エレベーターの中で、我慢出来ずに病院の検査結果を聞いてしまった。 そのことが、心の何処かで引っ掛かっていたのも事実。 でも、謝る機会を逸してしまっていた。
「仕事で気を遣っている分、他のことに社内で気を遣うのは煩わしいだけだ」
私の後ろのカーテンの上部だろうか? その近辺を見つめながら、高橋さんが言った。
そう。
まるでそれは、私と視線を合わすまいとして見ているようだった。
そして、そのまま背を向けて玄関へと歩き出す姿が、スローモーションのように視界に入ってきた。
「待って下さい」
立ち上がって、高橋さんの背中に向かって声をかけると、無言で高橋さんが玄関で靴を履きながらこちらを見た。
「そのことで……そのことで、そのことだけで私と別れるんですか? 一緒に時を刻んでいこうって言ったのは……高橋さん。 あれは……嘘だったんですか?」
女々しいようだが、引き留めずにはいられない。 まったくわけが分からないまま、このまま終わりにするなんて……。
「そう解釈してもらっても、構わない」
しかし、そんな感情を剥き出しの私に対しても高橋さんは冷静だった。
冷静というより、寧ろ冷酷で吐き捨てると言った物言いに聞こえる。
「高橋さん……私に何か隠していませんか? 言ってくれなきゃ分からないって、何時も高橋さんが言っているじゃないですか」
「フッ……」
エッ……。
すると、高橋さんが何故か微笑んだ。
「何も隠してはいない。 それに……やりたい時にやれない女は、要らない」
そんな……。
高橋さんが、後ろのベッドの方を見た。
ああ。
きっと、さっきのことを言っているんだ。
「遅くに悪かったな」
嘘でしょう?
本当に、行ってしまうの?
もう私の隣には、高橋さんは居てくれないの?
その腕の中で、抱きしめてもらえないの?
「高橋さん」
馬鹿のひとつ覚えのように、高橋さんの名前しか呼べない。
高橋さんの背中に向かって、もう1度呼びかけた。
「それと……」


