新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

今、何て言ったの?
高橋さん。
何が何だか分からず、隣に居る高橋さんを見た。
ハッ!
すると、前を向いていた高橋さんが私を見据えた。
「俺達、もう終わりにしよう」
『俺達、もう終わりにしよう』 って……どういうこと?
今、何が起こっているの?
何故、そんなことを告げられているのか、全くわけが分からない。
どうして、そんなことを言い出すの?
高橋さんが、ベッドから立ち上がった。
どうして?
「何故ですか? あの……よく理解出来ません。 嘘……ですよね?」
自分でも、不思議と驚くほど冷静だった。
と、言うより、まるで他人事のように客観的にみている自分が居る。 今置かれた状況が全く理解出来ていないが故に、現実と捉えられないから。
立ち上がった高橋さんが、ベッドに座っている私を見下ろした。
ああ。
それは、漆黒の瞳に何も映し出していないような……初めて高橋さんに会った頃みたいにあまりにも感情を表に出さない冷酷な視線だった。
何故、そんな瞳をするの?
どうして、そんな目で見るの?
先週までの高橋さんは、何処に行ってしまったの?
もう、その瞳に私は映っていないの?
「私……高橋さんに、何かしてしまったんですか?」
心の叫びを、怖さから絞り出すように声にした。
「俺には、やはり社内恋愛は無理だ」
そんな……。