新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

きっと、明良さんの所だ。
確か、電話で月曜日にって高橋さん言っていた。
てっきり、仕事が終わってからだとばかり思っていたから、まさか立ち寄りで明良さんの病院に行くとは思ってもみなかった。
もしかして、この前の検査の結果?
どうしよう……もし、結果が悪かったら……。
でも、高橋さんはどこも悪くないって何度も言っていたけれど、何となく半信半疑だったので、結果が本当に心配になってきた。
だけど、何で週末ずっと一緒に居たのに検査結果が出たらしいとか、月曜日は病院に寄ってから会社に行くからとか、どうして言ってくれなかったんだろう。 そんな思いも重なって悪い方へ、悪い方へと考えてしまう。
せっかく気合いを入れて出社したのに、高橋さんが居ないことで戦意喪失。 月曜日から出鼻を挫かれた形になってしまった。
がっかりしながら重い足取りで席に着くと、書類が山のように届いている。
きっと、中原さんが会計行きの棚から持って来てくれたのだろう。 いつもなら3人の中で1番早く来る高橋さんが配っておいてくれるのを、今日は代わりに中原さんが配ってくれたんだ。
そんなこと1つとっても通常のルーティーンから外れているので落ち着かず、変な胸騒ぎがしてならない。 案の定、仕事が捗るはずもなく無駄に時間ばかりが過ぎていく。 でも、目の前の現実に目を向けなければならない。 会社は動いてるわけだから、仕事もちゃんと進めていかなければ……。 高橋さんの教えを守ることで気持を奮い立たせて、必死に電卓を叩いていた。
「おはよう」
あっ……。
1番、顔が見たかった人の声。
一気に周りの空気が2℃ぐらい上昇した感じで、全身の血液の流れが速くなって熱くなった。
「おはようございます。 早かったですね」
「ん? あぁ……」
早かった?
中原さん。  
ふと時計を見ると、まだ10時前だった。
1時間程度の遅刻なのに、もう半日以上経っているような気分だったし、もし検査結果を聞きに病院に行っていたのだとしたら、その結果が早く知りたくて仕方がなかった。
此処が、会社じゃなければ……仕事が終わるまで聞けないだろうから、それまで耐えられるだろうか。
「おはよう」
悶々としていると、高橋さんに話し掛けられた。
「えっ? あっ。 おはようございます」