新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜

「相変わらず、ドジな奴」
「す、すみま……ンッ……」
いきなり高橋さんがそのまま私を引き寄せ、半ば強引にキスをした。
駄目……腰が、砕けそう。
立ったままだったので、高橋さんのとろけるような深いキスに、力が抜けて腰砕けになりそうだった。
そんな私を絶妙のタイミングで、高橋さんが腰を支えてくれている。
「フッ……今からそんなことで、夜はどうするんだ?」
「な、何、言ってるんですか。 わ、私、今夜はゲストルームで寝ますから」
半分、心にもないことを口走ってしまった。
「ふぅーん……」
高橋さんは、そう言っただけで自分で電気をつけてケーキを取り分け始めていた。
結局、明日も食べられるようにと6号サイズのケーキを買ったのに、残ったのは僅か1切れだった。
満腹になってひと休みしたところで、高橋さんがお風呂から出てくるのを待っている間、ソファーに座っていたら、何だかドッと疲れが出てきてウトウトしてしまっていた。 
バスルームのドアが開いた音で飛び起きると、高橋さんが定番のTシャツにハーフパンツ姿で髪の毛をバスタオルで拭きながら出て来た。
「何? お前、そんなところで寝てたら風邪ひくぞ」
「えっ? な、何で、分かっちゃったんですか?」
寝ていたのが、何で分かったんだろう?
「お前、 髪ボサ子だもん。 ハハッ……」
「えっ?」
慌てて髪の毛に手を当てると確かにボサボサだったので、手グシで直しながら思った。
ボサ子って……。
見ると、高橋さんは冷蔵庫から缶ビールを持って戻ってきた。
「キャッ!」
そして、いきなり私を抱き抱えると、ソファーに座って自分の両足の間に私を座らせた。
た、高橋さん。 
その行動にドキドキしていると、高橋さんが後ろから両手を回し抱きしめるようにしながら、缶ビールのプルタップを開けて、ビールをひと口飲んだ。
お風呂上がりの石鹸とシャンプーの匂いがして、仄かに後ろから高橋さんの香りがする。
体が密着しているので、ビールが高橋さんの喉を通る音がリアルに聞こえる。
「そう言えば……NEW YORKのベランダで、こんなことしてたよな?」
エッ……。
振り返った途端に、バランスを崩してソファーから床にそのままの体制で滑り落ちた。
「キャッ……」
「おい、おい。 頼むから家で臀部骨折とか、やめてくれよ?」
「痛……・だ、大丈夫です」
腰をさすっていると、高橋さんが前屈みになって後ろから両手を私の腰に回すと、またソファーに座らせてくれた。