高橋さんが後頭部を右手で引き寄せ、自分の胸に私の顔を押しつけた。
「あまり、泣かないでくれ。 そうでないと……俺のせっかくの誕生日に、お前が泣いてるなんて、ナンセンスだろ?」
あっ……そうだった。
今日は、高橋さんの誕生日だったんだ。
ミサさんのことで頭がいっぱいで、キーケースのお礼も言われたのに、すっかり忘れてしまっていた。
「お誕生日、おめでとうございます」
少しだけ高橋さんの胸から離れたが、おでこはまだ胸につけたままお祝いの言葉を伝えた。
「フッ……そういうことは、ちゃんと本人の顔を見て言ってくれないと。 貴ちゃん。 拗ねちゃうよ?」
ひゃっ。
高橋さんが、耳元でそんなことを囁いたと思ったら、いきなり耳に息を吹きかけたので、体が反応して思わず離れた。
貴ちゃん。 拗ねちゃうよって……。
「本当に、もう……高橋さん。幾つですか!」
「ん? 29」
即答ですか。
はぁ……そんなに胸張って言わないでよ。
ガックリ項垂れていると、高橋さんが私をまた引き寄せた。
「まだ時間も早いし、このまま食材買いに行って家に来い。 そのぐらい、俺の誕生日の我が儘を聞いてくれてもいいだろ?」
高橋さん……。
思いがけない言葉に嬉しさが恥ずかしさに重なって、ゆっくり頷くことしか出来なかった。
「じゃあ、もう1度家に戻って、得意のお泊まりセットとやらを取っておいで」
「な……何言ってるんですか。 べ、別に、得意じゃないですって」
何となく馬鹿にされたみたいで、ついムキになってしまった。
「すっぺた、ほっぺた言ってないで、さっさと行く。 時間がもったいないだろ?」
「はぁい」
不満を含んだような返事をした。
高橋さんに助手席のドアを開けてもらって、傘を受け取った後の足取りは先ほどとは違って軽く、危うく雨で滑りやすくなっていたマンションの玄関前で、転けそうになってしまった。
食材を買いに立ち寄った際、せっかくだからバースデイケーキも欲しいと高橋さんに言うと、 『 お前が、食べたいんだろう 』 と、冷やかされたが、野菜、フルーツ、お総菜等を買って、お目当てのケーキも購入。
これだけは譲れなかったので私が代金を出して、高橋さんが他のお総菜を見に行っている隙に、こっそりネーミングも入れてもらった。
「あまり、泣かないでくれ。 そうでないと……俺のせっかくの誕生日に、お前が泣いてるなんて、ナンセンスだろ?」
あっ……そうだった。
今日は、高橋さんの誕生日だったんだ。
ミサさんのことで頭がいっぱいで、キーケースのお礼も言われたのに、すっかり忘れてしまっていた。
「お誕生日、おめでとうございます」
少しだけ高橋さんの胸から離れたが、おでこはまだ胸につけたままお祝いの言葉を伝えた。
「フッ……そういうことは、ちゃんと本人の顔を見て言ってくれないと。 貴ちゃん。 拗ねちゃうよ?」
ひゃっ。
高橋さんが、耳元でそんなことを囁いたと思ったら、いきなり耳に息を吹きかけたので、体が反応して思わず離れた。
貴ちゃん。 拗ねちゃうよって……。
「本当に、もう……高橋さん。幾つですか!」
「ん? 29」
即答ですか。
はぁ……そんなに胸張って言わないでよ。
ガックリ項垂れていると、高橋さんが私をまた引き寄せた。
「まだ時間も早いし、このまま食材買いに行って家に来い。 そのぐらい、俺の誕生日の我が儘を聞いてくれてもいいだろ?」
高橋さん……。
思いがけない言葉に嬉しさが恥ずかしさに重なって、ゆっくり頷くことしか出来なかった。
「じゃあ、もう1度家に戻って、得意のお泊まりセットとやらを取っておいで」
「な……何言ってるんですか。 べ、別に、得意じゃないですって」
何となく馬鹿にされたみたいで、ついムキになってしまった。
「すっぺた、ほっぺた言ってないで、さっさと行く。 時間がもったいないだろ?」
「はぁい」
不満を含んだような返事をした。
高橋さんに助手席のドアを開けてもらって、傘を受け取った後の足取りは先ほどとは違って軽く、危うく雨で滑りやすくなっていたマンションの玄関前で、転けそうになってしまった。
食材を買いに立ち寄った際、せっかくだからバースデイケーキも欲しいと高橋さんに言うと、 『 お前が、食べたいんだろう 』 と、冷やかされたが、野菜、フルーツ、お総菜等を買って、お目当てのケーキも購入。
これだけは譲れなかったので私が代金を出して、高橋さんが他のお総菜を見に行っている隙に、こっそりネーミングも入れてもらった。


