お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

尚さら申し訳なくて、ゆるゆる首を振る。だけど、勇運くんは諦めなかった。

むしろ、


「抵抗してもいいけど、ムダだぞ。

俺は、諦めが悪いからな」

「……っ」


諦めてもらおうとしたら、逆に諦めさせられた。本人の言う通り、きっと勇運くんは離してくれない気がする。


「勇運、まるで王子じゃん~」
「今度は私にもしてよね、勇運!」


いつの間にか、クラスの皆の花道が出来ていた。興奮している声が、アチコチから聞こえる。


吐き気の方に必死で気づかなかったけど……。モテる勇運くんが、一人の女の子をお姫様抱っこしてる――なんて、前代未聞だったらしい。


教室はおろか、保健室に続く廊下まで。

歓声や絶叫、色んな声が響いていた。