「逃げた方が、いいんじゃない?」 「俺が? なんで」 「だって、危ないから……」 「……」 何も答えなかった男子は、近くにあった誰かのノートを手にする。 それをメガホンみたく筒状にして、ゆっくりと音を立てず、空気すら揺らさないように移動しながら、席に座る私の前に立った。 男子とハチの距離は、まさに目と鼻の先。 危ないよ―― そう言おうとした矢先。 男子は、メガホンを持つ腕を振り上げる。 そして、触角が気になるのか、まるで毛づくろいをするハチの真上から、ソレを叩きつけた。 バシンッ