「なんか今、妙に腹立ったんだけど」
「そう? 気のせいじゃない?」
兄弟ケンカをおっぱじめそうな僕たちを察してか。冬音ちゃんが、遠慮気味に話し掛ける。
「守人さん、大丈夫ですか? 夏海がそばにいて……」
「冬音ちゃん……うん、大丈夫だよ。少しずつ慣れていきたいって、僕もそう思ってるから」
「守人さん……」
今もなお、僕の前にいる冬音ちゃんの弟――夏海くん。
その小ささが、あの日、父さんの話を聞いた僕とよく似ていて。
ぽんっ
あの日の父を真似て。
思わず、夏海くんの頭に手を乗せた。
「え……」
驚いたのは、僕以外の全員。ゴクリと、生唾を飲む音さえ聞こえてくる。
確かに、僕自身も驚きだよ。子供は生涯嫌い続けると、無意識の内に、自分の中で決めていたから。
そんな僕が、夏海くんの頭を撫でているなんて。
だけど、どうしても託したいんだ。



