そのハチは、驚くことに私の手のひらほどある。そんな巨大なハチが、私の足元すぐ近くにいる――

この現実に、クラリと眩暈がした。



「だから言ってるだろ。早く逃げろ」

「で、でも……」



私が動くと、ハチも一緒に動きそうで怖い。動いた瞬間に針で刺されそうで、怖い。



「怖くて、動けない……」



眉を下げて、男子を見る。

男子の向こう側には、既に避難しているクラスの皆。ハチに怯えた表情で、私たちを遠くから心配そうに見ていた。


というか……。

目の前にいる男子は、逃げなくていいのかな。