勇運くんは、スラリとドアを通り抜け、出て行った。

受付の前を通った時、またもや受付の人が「イケメン」と言ったけど、勇運くんの耳には入らない。


今、彼の頭の中にあるもの。


それは――



『父さんの人生の上に、あの子の人生が続いた。あの子には……これからを大切に生きてほしいな』



「……」



あの日、一粒も涙を見せなかった守人さんだった。