お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

思えば、成希が更生なんてするはずない。だって、この廃墟に来た時、彼はなんて言った?


――俺、何も悪い事してなくね?


廃墟に着いて、開口一番。彼は自分の非を認めなかった。「俺は悪くない」の一点張り。それに……本当に「私を大事にしたい」と思ってるなら、こんな廃墟に連れてくる?


さっきの全ては、私を騙す為の芝居だったんだ――


「……っ」

「ハッ。解せねーって顔だな。でもな、解せねーのはコッチなんだよ。なんで高校生ごときに、俺が警察の世話にならねーといけねんだよ。

親にもバレるわ、学校にもバレるわ……、おかげで大学でも肩身狭いっつーの」

「そ、んなの……」

「知らない、ってか?
俺が悪い、ってか?
なら、思い知らせてやるよ。どっちが悪いのか、誰が正しいのかを」


その時、成希が鉄パイプをガンッと私の真横に振り下ろした。「ひっ」と悲鳴をあげた私を見て、成希はニタリと笑う。


焦点の合ってない目がぐにゃりと曲がった笑顔が怖くて、怖くてこわくて――足がもつれながら、何とか走って距離を取った。