お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「私は、あの日の事を思い出すと……気分が悪くなって……、まだ、しんどい」


むしろ。
忘れたいのに忘れられなくて。
刺さった釘が抜けないみたいに、ずっと私の心に傷を負わせ続けている。


「今度……、なんて。私は、いらない。

私の人生に、もう……成希は、いないの」


だから成希、もうサヨナラだよ。
私はもう、あなたと反対の方を向いてるの――


「……」

「成希……」


俯く成希に、なんて声をかけようか迷った――その時だった。


「あーあ。もう使えないのかよ。つまんねー」

「え?」


成希は「ヨッ」と言いながら、地面に手を伸ばす。
掴んだのは――鉄パイプ。


「もうちょっと楽しめるかと思ったのに、なーんで、そんなに強情なんだよ、お前」


ポンポンッと、リズム良く鉄パイプを振り、反対の手に着地させる成希。その顔には、優しかった頃の名残なんて全くなくて……。


――今度こそ、お前を大事にしたいんだ


さっきの成希は、全て演技だったと思い知らされる。