お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する


「~っ、う……っ」


瞬間、体の奥底から湧き上がる吐き気。気力で何とか立っていた体は、途端に重力に勝てなくて……ドサリと、両ひざをつく。


私は、今までバケモノと付き合っていたのだと。今やっと、心の底から理解した。


「早く別れれば良かった」なんて、そんな生ぬるいものじゃない。そもそも、人間の皮を被ったバケモノだったのだから、付き合う事すら間違いだったんだ。


「おーい、どうした。なんで座ってる?」

「……っ」


今、口を開けたら……ダメだ。嗚咽も、涙も……私の中の「恐怖」が、全て出て行ってしまう。

今、成希の前で「私が恐怖している」と知られるのは……直感的にマズイ気がした。


「へ……、いき……」

「ふーん、あっそ。俺、向こうにたばこあるから取りに行って来る」

「う、ん……」


そう言って、成希は、いなくなった。私の前から姿を消し、足音さえも聞こえなくなった。