「誰だ!?」
机を蹴飛ばして東銀雅が向かってきた。
扉を勢いよく開かれて見下ろされる。
しゃがんで脚を痺れさせていた私に、逃げる暇なんてなかった。
「お前、俺たちの話、聞いてたな」
「あ、南北さん……」
私の姿に目を丸くする西彩金。
モブな私の名前、知ってたんですね。
いやそれよりも、殺人光線を浴びせてくる東銀雅に土下座する。
「……すみません、わざとじゃないんです。明日提出の宿題を取りに来ただけで………」
「アァン?」
「ヒィッ!」
「銀雅! 南北さんを威嚇しないで! ごめんね南北さん、大丈夫?」
小走りで来た西彩金に手を差し出され、それに引き上げられて立ち上がる。
私とたいして変わらない身長なのに、力強い。
本当に男の子なんだ………。
西彩金の顔を見つめていると、安心させるように微笑まれた。
緊張を解いた瞬間、首周りの圧迫感とともにベリっと引き剥がされる。
「彩金に触れるな」
「銀雅は黙ってて!」
私の首に回る東銀雅の腕を、西彩金が引き剥がしにかかる。
背中にイケメンの胸、正面に美少女の荒い息。
私、呼吸不全で意識が飛びそう………。
「チッ……」
舌打ちとともに、首周りが緩んで、その場に崩れ落ちる。
背中を丸めて咳き込んだ。
「ああもうっ、乱暴なんだから。大丈夫? 南北さん」
苦しくて、視界が滲む中、優しく声をかけて背中をさすってくれる。
天使かな。
お礼を言おうと顔を上げると、目の前に美少女のドアップ。
毛穴ないなぁ。
なんてぼんやり思った瞬間。
「………んっ」
唇を塞がれた。

