「ほんとうに?」
「ほんとだからっ、もうやめて、くすぐったい……」
「あ、ごめんね。触られるの、嫌だったよね……」
ぱっと両手を離して、降参したように顔の横にあげた。
寂しそうな表情をする彩金に、申し訳なくなった。
心配してくれたのに、そっけない態度を取ってしまった。
「嫌じゃないよ、ただ、びっくりしただけで……」
「そう? よかったぁ」
安堵の声とともに、正面からぎゅっと抱きしめられた。
「氷昌ちゃんごめんね、もう離れないから」
「もういいので、大丈夫なので……、あの、ありがとう」
そもそもの原因が彩金さんで、彩金さんに関わらなければ、呼び出されて文句を言われることもなかったんじゃ……。
いや、助けてくれたんだもん。
そこは考えちゃいけない。
私が女子集団に認められるくらいに釣り合っていれば、こんなことにならなかっただけの話だ。
のどにひっかかるような違和感は無かったことにした。
きっと、たいしたものじゃない。
だから私は、首筋に顔を埋める彩金がどんな表情をしていたか知らない。
「うん。………そうだ、スマホ今ある? 連絡先交換しよ。連絡くれれば、いつでも駆けつけるからね」
体を離して、明るく話す彼の笑顔を前に、断る選択肢は消し飛んだ。
家族以外に登録のない連絡先が増える。
もしまた何かあった時、助けてもらえるという打算がちらつく。
……知られたら絶交かな。
とにかく、浮き足立つのを悟られず、クールに対応しようとつとめた。

