疲労困憊で重い荷物を肩にかける学校帰り。
夕日に照らされて、慣れた道をぼんやり歩いていると、ふと思い出すことがある。

「あ…………。明日提出の宿題、引き出しに入れっぱなしだわ」

つい口に出た。
周りに誰も居ないので、この恥ずかしい独り言は聞かれていないのが救いか。

なんてこったい。
バカな私は提出物で点数を稼がなきゃならんというに。

ため息をついて、下校中のところを仕方なく引き返す。
幸い、学校に戻るのに10分もかからない。
気持ち早歩きで学校に到着。
上靴に履き替え、階段を登っていると、話し声がした。

下校時間になっても残ってるなんて、学校が好きなのか、家に帰りたくないのか。
どっちでもいいさ、私には関係ない。
教室に近付くと声がはっきり聞き取れるようになった。

「だからいい加減、ボクから離れてよ!」

「せっかく会えたのに、別れるなんて悲しいこと言わないでくれ」

「別れるとかじゃなくて。ただ、もう少し距離をとって……」

「俺のこと嫌いになった……?」

「そ、そうは言ってないけど……」

「だったらいいじゃん、今まで通りで」

「よくないの!」

別れを告げる女子の叫びの後、男子のすがる声。

別れ話かよ。
そりゃ、他の場所では話せんわな。
気持ち分からなくもないが、よそでやってくれないかなー。

というのも、話し合いが行われているのは私の用事がある教室だったからだ。

見なかったことにして帰ろうか……でも宿題………。
ここまで来て収穫なしで帰るのも悔しい。
今日のうちに片付けて、明日なんの憂いもなく登校したい。
うーん。

扉の隙間から覗く。
人影は、私の席に陣取っている。
こっそり抜き取って退散できない位置だ。

それよりも、別れ話をしている人物に驚いた。
彼らは、全校生徒公認のカップルだったからだ。