私は遥さんがシャワーから出てくるまでリビングで待機していた。

 ソファに座って膝の上で両手を組んでじっとしている。

 だけど、鼓動は高鳴るばかりで手のひらにじわりと汗をかいた。


 昨日みたいなキスをするのかな。

 ドキドキしすぎて心臓が壊れそうだよ……。


「あれ? 待ってたんだ。先に寝ててもよかったのに」

 遥さんがリビングに戻ってくると、私は慌てて立ち上がった。


「えっと、一応挨拶を……」

「挨拶? ああ……」

 遥さんは私に近づいてそっと額にキスをした。


「じゃあ、おやすみ」

「えっ?」


 拍子抜けしてじっと彼を見上げていると、頭を撫でられた。


「少し飲むから、君は先に寝てていいよ」

「そう、ですか……おやすみなさい」

「おやすみ」


 それから私は彼にそっと背中を押されてリビングを出た。

 まるで、早く寝ろと言われているみたいで落胆した。


 私がお酒が飲めないからいけないのかなと思ったけど。

 それよりも、どうして昨日みたいなキスをしてくれなかったんだろうって、そっちのほうがショックだった。


 私からするべきだったのかな?

 だけど、もし嫌がられたらどうしようという気持ちもある。


 ベッドに入ってもしばらく眠れなかった。

 どうして?

 なんで?

 そればかりが頭に浮かぶ。


 わかんない。

 遥さんが何を考えているのか、ぜんぜんわかんない。