「遥さん……?」
彼は私の髪を撫でて、それからその指先で耳のうしろを撫でた。
なんだかぞくぞくして、胸の奥が熱くなった。
不安に思って見上げると、彼は鋭い目つきで私をじっと見下ろしていた。
とても、近い。
恥ずかしくなってきて目をそらすと、彼は私に近づいて、ぼそりと言った。
「おやすみの挨拶をしようか」
「え……」
遥さんは私の肩を抱いてぐいっと抱き寄せる。
その拍子に私は思わず彼の胸に抱きついてしまった。
「遥さん」
ああ、これはおやすみのハグだなと思った。
だから、私も彼の背中に腕をまわそうとした。
だけど、それはできなかった。
「は、るかさ……んっ!」
突然唇を塞がれて呼吸ができなくなった。
あまりにも不意打ちで、鼻で呼吸をすればいいのに、私は息を止めてしまって苦しくなった。
「んんーっ!」
必死に呼吸をしようとして、彼から離れようともがいた。
唇が離れた瞬間、目が合って、それから彼が言った。
「息を止めなくていいよ」
「そ、そん……」
そんなこと言われても無理だよ!!
彼はふたたび私にキスをした。
何度か繰り返していくうちに、なんとなく呼吸のタイミングがわかった。
だけど、胸の奥が熱くてドキドキして、体がうずうずした。
変な気持ちがする。
こんなの、いけない気がした。
