加賀さんは遥さんの実家のお手伝いさんらしく、彼が中学生の頃から知っているらしい。
そう思うと心強いなあと思った。
私はリビングとキッチンとバスルームはすでに把握しているけれど、まだ知らない部屋があったので遥さんに案内してもらった。
「ここは書斎。少し散らかっているから入らないで。仕事関係のものもあるしね」
そう言われて「わかりました」と答える。
「そして、ここが寝室」
彼がドアを開けると広い部屋に大きなベッドが置いてあった。
一緒に寝るんだよね……。
そう思うとドキドキしてきた。
だけど、意外なことを言われた。
「この部屋は君が好きなように使っていいよ。勉強するためのデスクも用意しておいたし」
「ありがとうございます。でも、遥さんは?」
「俺はだいたい書斎で寝ることが多いから」
一緒に寝ないの?
夫婦なのに?
その疑問を口にしようとしたけれど、なんだか妙に安心したので言わないでおいた。
その代わりに気になることを訊ねてみる。
「書斎には遥さんの寝る場所はあるんですか?」
「うん。実は簡易ベッドがあるからね。心配しなくていいよ」
「そうですか。ちゃんと疲れが取れるなら、それでいいんですけど……」
「俺のことを心配してくれるの? ありがとう」
彼は私の頭を撫でながらにっこりと笑った。
