それからは、ふたりとも穏やかな表情で、当たり障りのない話で盛り上がった。

 遥さんは自分の仕事の話や海外の渡航歴なんかを話し、由希ちゃんは私の小さい頃の話とか学校のことを話した。

 遥さんはにこにこしながら由希ちゃんの話を聞き、由希ちゃんも上機嫌でワインを飲んだ。


 最後は和やかに締めくくり、私と由希ちゃんは片付けを手伝ってから、遥さんのマンションをあとにした。

 遥さんは綺麗にラッピングされた焼菓子を私と由希ちゃんにお土産として渡してくれて、由希ちゃんは「女子力もあるじゃん」と感心していた。


 マンションを出るときはふたりで丁寧にお礼を言って、遥さんは笑顔で見送ってくれた。

 途中ハラハラしたけど、結果的にはふたりが会ってくれてよかったと思う。

 だけど、私は気になって、由希ちゃんに訊いてみることにした。


「遥さんの印象はどうだった?」

 おずおずと訊ねると、由希ちゃんは明るく答えた。


「いいんじゃない?」

「ほんと?」

 その言葉を聞いて心が軽くなり、声もはずんだ。


「うん。しっかりした人だし、あたしの挑発的な言葉にも感情的にならずに冷静に答えてたし」

「由希ちゃん、わざとだったの?」

 由希ちゃんは私を見てふっとため息をついた。


「そういう男って多いのよ。普段優しそうな顔してるけど、プライドが高くて自分のことしか考えてない奴。結婚してから本性出す男もいるしね」


 そんなこと、想像もしたことなかった。