「まあ、いいよ。いろはの写真は絢が撮ってくれる手筈だから」

「えっ……」


 そりゃ、隠し撮りの天才だよ。

 さぞかし上手く撮ってくれるだろう。

 式場のカメラマンの人もびっくりなくらいの。


「なんか、複雑なんだけど」

「楽しみだな。どうやっていろはの写真集を作ろうか、考えただけでもわくわくするよね」


 出た出た、遥さんの変態性癖。

 でも、私だって負けないよ。


「私なんか、イラスト入りで【はるかアルバム】を作っちゃうから」

「へえ、それは楽しみだ」

「負けないから」

「俺に勝てると思う?」

「絶対すごいの作るもん」


 私たちが言い合いをしていると、今度は加賀さんが控室に顔を出した。


「まあ、本当にお綺麗ですわ!」

「ありがとうございます、加賀さん」

 私がお礼を言うと、彼女は笑顔で涙ぐんだ。


 遥さんは加賀さんを母親代わりにしている。

 けれど、一応きちんと義両親は出席している。おじさまと美景さんは終始笑顔でゲストに対応していて、知らない人が見たらとても仮面家族とは思わないだろう。

 私の母が明るく振る舞って、雰囲気はより良いものになっている。


 前もって母に事情を話したら、驚くこともなく「任せて」と言った。

 おそらく、おじさまのことを誰よりもよく知っているからだろうと思った。