遥さんが手を伸ばしてきたので、私はその手を取って立ち上がった。

 靴はぴったりだけど窮屈ではなく、少し歩いてみたけど軽くて歩きやすい。


「私の足のサイズ、いつの間に……」

「式場で靴のサイズを測っていたよね」


 確かにドレスを試着するとき靴も履いてみたけど、そのとき正確に測った足のサイズを彼は記憶していたのだろう。

 私に内緒でこんなサプライズを用意してくれるなんて。


「ありがとう、遥さん。とっても素敵。夢を叶えてくれるなんて、私は本当に幸せだよ」

 本当に、こんなに幸せでいいのかなっていうくらい。


「それは、俺のほう」

 と遥さんは言った。

 彼は私と向き合って、私の両手を握った。


「この靴の持ち主を探していた。ずっと昔から、この日が来るのを待ち続けた」


 まるでシンデレラを探す王子さまのストーリー。

 そうか。私はあのとき、4歳のときに、ガラスの靴を片方だけ、あなたの記憶に残していったのね。


「やっとだよ」

 と彼は切なげな表情で笑った。


 周囲でパチパチと拍手が起こり、恥ずかしくなってしまった。

 だけど、遥さんはまったく動じることもなく、ただ私の両手を握って微笑んでいた。


 遥さんの気持ちが胸の奥に深く伝わって、嬉しさと切なさに涙がじわりとあふれそうになった。