その夜、遥さんにおじさまの要件を伝えたら、彼は意外にもお見舞いに行くと言い出した。

 説得するのに時間がかかるだろうと思っていたから、緊張の糸がぷつりと切れたみたいに力が抜けた。


「あの人がどんな言いわけをするのか、聞いてみたい気もするからね。まあ、何を言われようが今さらだけどね」


 遥さんは冷静にそんなことを言った。

 どうやらまともに話し合いはしないようだ。

 だけど、それでも彼がおじさまのお見舞いに行ってくれるので、私は少し安心した。


 翌日におじさまの病室を訪れると、美景さんがいた。

 彼女は私たちにぺこりとお辞儀をするとおじさまに向かって言った。


「ふたりで話したほうがいいわよね? 私は退出するわ」

「ああ、そうしてくれるか」


 おじさまがそう言うと、私に視線を向けた。

 その雰囲気を察して「じゃあ、私も」と美景さんのあとから出ていこうとしたら、遥さんに腕をつかまれた。


「いろははここにいてくれる? あの人とふたりきりだと俺、手が出るかもしれないから」


 穏やかに微笑みながらとんでもないことを言う遥さんに、私は背筋がひやりとした。

 どう答えたらいいか迷い、おじさまに目を向けると、彼は頷いた。


「いろはちゃん、よければ同席してくれるかな」

 私はドキドキしながら「はい」と言った。