18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


「遥くんは正直、正史郎くんのもとで、よくまともに育ったなと思うわ」

「えっ……」

「ぜんぜん父親と似ていないわよね。優秀だし冷静だし、何より物怖じしないのがいいわ。正史郎くんもそれで早く遥くんに後を継がせたいのね」


 どうしよう、言えない。遥さんが家も仕事も放棄しようとしているだなんて。

 母はどれくらい本家の事情を知っているのだろう。


「ママ、あの、遥さんが本家を継がなかったら、どうなるんだろう?」

 あくまで仮定として、訊ねてみた。

 そうしたら、母は笑った。


「それはそれで仕方ないんじゃない? 今は実子が跡を継ぐ時代でもないでしょ」

「え? それでいいの?」

 母の答えには少し驚いた。

 だって、母は自分の家を継いで父が養子になったから、そこにはこだわりがあると思っていたのに。


「子供の人生は子供のものよ。家なんて、どうにでもなるのよ」

「意外……じゃあ、ママはどうして家を継いだの?」

「え? んー、パパがうちの名字を気に入ったから」

「そんな理由!?」

「あら、理由なんてなんでもいいのよ」


 母はにこにこしながら、もう何度も聞いた父との馴れ初めを話した。

 おじさまの思いがどうであれ、遥さんが本家を継がなくてもいいのかもしれないと思うと、少しほっとした。