その日は学校帰りに珍しく母から電話があった。おじさまが手術のために入院をするということだ。
すぐに病院へ駆けつけると、ちょうど入口のところで母と会った。
「遥くんに電話しても出ないのよ。仕事中だからメッセージを送っておいたんだけど、返信もないわね」
「私も連絡したけど……」
メッセージの返事もない。
ただ、今の遥さんは父親が危篤になってもお見舞いには来ないだろうと思う。
考えただけで胸が痛くなる。けれど、私は彼にお見舞いを強制することはできない。
病室に入ると、おじさまのそばに美景さんと奏太くんがいた。
「いろはちゃん、来てくれたんだね」
おじさまは以前にも増して痩せ細っているようだった。
遥さんから家族の話を聞いた身としては、複雑な気持ちになる。
だけど、それで病人に対して悪意を持つことなどできない。
「手術、上手くいくことを祈っています」
私はそれを言うだけで精一杯だった。
結局、遥さんから連絡が来ることはなかった。
