夕食のあとで、遥さんはソファに座り、ラッピングのリボンを解いて袋から丁寧にチョコを取り出した。
ココアパウダーを振りかけた丸い形のトリュフが6個。
彼はそれをひと口食べた。
私はどんな反応があるかドキドキしながら彼のとなりにそっと腰を下ろした。
「酒が入ってる?」
「うん、ブランデーを少し」
小春が家にあるブランデーを少し使わせてくれた。
「美味しいよ」
と彼はにっこり笑って言った。
「よかったあ。大人の味にしたいなあと思って」
「いろはも食べる?」
「え、でもお酒が入ってるし」
「ひとつくらい平気だろ」
遥さんはチョコをひとつ、つまんで私の口もとに持ってきた。
なんだか恥ずかしくなって少し顔を引いた。
「じ、自分で……んぐっ」
言い終わる前に無理やり口に入れられた。
それから彼は顔を近づけて、面白そうに笑みを浮かべながらこそっと言った。
「大人の味、どう?」
「んんっ……!」
彼はチョコと一緒に指まで入れてきた。
「あーあ、食べちゃった。美味しい?」
心臓がどくどく鳴って、体が熱くなって、恥ずかしくていやらしくて、涙が出そうになりながら、私はこくこくと頷いた。
はっきり言ってチョコの味なんかわからない。
「じゃあ、次は別のものを食べようか」
私は窓の外に目をやった。
さすが高層マンション。夜景が綺麗だな、なんて今さら思った。
チョコはほんのり苦みのある味にしたのに、ものすごく甘ったるく感じる夜だ。
ずっとふたりで、こんなふうに、過ごしていけたらいいなと思った。
