バレンタインのチョコレートは毎年友達にあげていたのに、私は今年初めて異性にプレゼントする。

 なんだか、今さらだけど恥ずかしいな。


 ドキドキしながら彼の帰宅を待っていると、がちゃりと玄関のドアが開いた。

 慌てて迎えに出ると、遥さんより先に花束が目の前に差し出された。


「これ、いろはにプレゼント」

 彼がにこやかにプレゼントしてくれたのは、可愛いクマのぬいぐるみ付きのピンクと黄色と白が混ざった花束だった。


「え? どうして遥さんが?」

「海外のバレンタインは男性が女性にプレゼントをするんだよ」

「素敵。ありがとう。あ、でも私もあるの!」


 花束を受けとって、彼と一緒にリビングへ行くと、ラッピングしたチョコを手渡した。


「男の人にチョコをあげるのは初めてなの」

「へえ、それは嬉しいな。ありがとう。あとで一緒に食べよう」

「うん」


 彼はそう言って鞄を置きに書斎へ行き、洗面所で手を洗った。

 私は花束をしっかりスマホで写真に収めて、それから花瓶に活けるとリビングの棚に置いた。

 クマのぬいぐるみはとなりに座らせた。


 それから夕食を食べながら、私は小春の家でみんなでチョコを作ったことを話した。

 その際、自然に学校でチョコが禁止されていることを話題出した。

 そうしたら、思わぬことを彼から言われた。


「ああ、バレンタイン禁止にしたの、俺だよ」


 私は口を開けたまま彼を見つめて言葉を失った。