高校生のときに、一度だけ、いろはと再会した。

 彼女は小学生になっており、ずいぶんと綺麗な顔立ちをしていた。

 そして、愛らしいほどに可愛いのである。

 遥を見たいろはは開口一番こう言った。


「はじめまして。秋月いろはです」


 ああ、完全に忘れているなと遥は思った。

 しかし自分も中学生の頃よりずいぶん大人になったし、外見ではわからないだろうと思い、それも仕方がないと思った。


 また会わなくなれば、彼女は忘れてしまうだろう。

 彼女にとって、一度会っただけの男のことなど日常の一部分にしか過ぎない。

 思い出のひとつ。過去の経験のひとつだ。


 特別にはならない。


 彼はいまだにいろはの写真を撮っていた。

 時間の許す限り、彼女の行くところへ足を延ばし、彼女を見つけて写真に収めた。

 パソコンには大量の写真データを保存していて、彼は丁寧にフォルダ分けをしていた。

 そして、写真を眺めてひとり笑みを浮かべるのだった。


「いろは、綺麗だな」


 ――ああ、早く君の夢を叶えてあげたい――