18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~


 遥はいろはを抱きかかえて口を塞いだ。

「泣くな!」

 そう言ったものの、今度は恐怖に震えているのか、いろはは一層声を出そうとした。


「ちっ……めんどくさいな」

 遥は彼女を抱えてベッドに下ろし、一緒に転んで布団をかぶった。


「声を出すな。静かにしろ」

「んんんーっ!」

「泣き止んだら許してやる」

「んっ……」


 いろはは震えているが、素直に言うことを聞いた。

 大人しくなったところで遥は彼女の口を塞いでいた手を離した。


「う、ぅ……」

 いろははまだ涙ぐみながら遥をじっと見つめた。

「なんだよ? 見るな」

 泣いた顔をじろじろと見られるのは気分が悪い。


「いたいの?」

 と彼女が訊いた。

「え……?」

「あのね、ままがね……いたいの、とんでけってしたら」

「いや、お前、何言ってんの?」


 子供の言語は意味不明すぎる。

 遥が呆れて目をそらすと、ふいに額に小さな手が伸びてきた。


「いたいの、とんでけー」

 いろはは遥の額を触って微笑んだ。

「いたいの、とんでけー」

 遥は驚いて目を見開き、小さな彼女をまじまじと見つけた。


「ほら、いたいの、どっかいった」

 えへへ、と笑う彼女に、遥は呆れるどころか、胸の奥が強烈に熱くなった。


「ままがね……こうすると、なくのとまるって」

 遥は堪えきれずに涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。


 いろはは驚いて目を丸くしたが、そんなことに構う余裕が遥にはなかった。

 遥はうつむいて、声を出して泣いた。


「かあさん……」