ふて寝。
遥はカーテンで遮光し、ベッドの中で布団をかぶって眠った。
彼らの声を聞きたくないので寝てしまうのが一番いいと思ったのだ。
懐かしい夢を見た。
まだ母が生きていた頃の夢だ。
父もそれほど仕事は忙しい時期ではなかったのか、一緒に夕食を食べていた。
楽しい時期もあったはずだ。母も笑っていた。
こんな運命になると誰が予想しただろう。
少なくとも遥は、あの幸せな家庭の中でずっといたかった。
父が家にあまり帰らなくなってから、母は遥への当たりがキツくなっていった。
祖父から受けるストレスも限界だったのだろう。
秋月家の立派な跡継ぎに、という母の言葉は今思えば執念そのものだった。
ただ、父と母と笑って暮らしたかっただけなのに。
神さまはどうしてこんな小さな幸せさえ、奪ってしまうのだろう。
涙がこぼれて枕に落ちた。
他人の前では泣けないので、ひとりになったときに泣いた。
絶対に、誰にも、知られたくないことだった。
はずなのに――。
がちゃりと音がして、部屋の中に誰かが入ってきた。
慌てて起き上がった遥の目に飛び込んできたのは先ほどの華やかな服を着た女の子。
いろはだった。
